小村雪岱(こむら せったい)の作品一覧

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小村雪岱(こむら せったい)本名は安並泰助(旧姓 小村)
明治20年(1887年)生-昭和15年(1940年)没
埼玉県川越市生まれ。
「雪岱」の号は鏡花が与えたもの。「岱」は中国の泰山の別名。

東京美術学校で日本画を学び、在学中に知遇を得た泉鏡花の指名により27歳で『日本橋』の装幀を手掛け、以降は鏑木清方や橋口五葉らに替わって鏡花本のほぼすべての装丁を担当し、他の作家のものも含めて生涯に300冊近くの装丁を手がけています。

新聞や雑誌の連載小説挿絵では雪岱調と呼ばれる斬新な表現で人気を博し、「昭和の春信」との異名もあります。

「舞台美術家」としても役者からの信頼も厚く、多くの名優から引く手あまたでした。

また、発足間もない資生堂意匠部に関わっていた時期もあり、資生堂文字といわれるロゴも考案し、商品や広告デザインにも携わるなど、商業美術の世界でも時代を先導する足跡を残し「意匠の天才」とも称されています。

装幀本と口絵・新聞連載挿絵

雪岱が手がけた装幀本の数々

雪岱は装幀家として、泉鏡花以外にも里見弴、久保田万太郎、谷崎潤一郎ら数多くの作家の著作に関わり、生涯に300冊近い本の意匠を手がけています。


出典:三井記念美術館の展示より


世田谷図書館の展示より

泉鏡花

『日本橋』大正3年(1914)


『日本橋』大正3年(1914) 清水三年坂美術館収蔵 出典:三井記念美術館

『愛染集(あいぜんしゅう)』大正5年(1916)


『愛染集(あいぜんしゅう)』大正5年(1916) 清水三年坂美術館収蔵 出典:三井記念美術館

その他作家

久保田万太郎 『下町情話』 大正4年9月 千章館

   

出典:ヤフオク 2021.10 25,000円

小村雪岱による多色摺り木版装の初期装幀本の一冊

邦枝完二  『繪入草紙 おせん』 昭和9年(1934)

邦枝完二 『繪入草紙 おせん』 昭和9年(1934) 清水三年坂美術館収蔵 出典:三井記念美術館

木村哲二  『江戸の青空』 昭和11年(1936)12月 一誠社

連載小説の挿絵原画

初めて手がけたのは里見弴作『多情仏心』(大正11~12年)。その後、邦枝完二とのコンビで「雪岱調」と称される様式を確立して不動の評判をえました。

おせん 傘 出典:三井記念美術館

おせん 縁側 出典:三井記念美術館

(左手前から)《お傅地獄 入墨》昭和10年(1935) / 《お傅地獄 傘》昭和10年(1935) 出典:三井記念美術館


里見 弴 『闇に開く窓』第70回 手提鞄(8)(『大阪朝日新聞』
昭和4年(1929)11月16日掲載) 紙本墨画 個人蔵


吉川英治 『遊戯菩薩』第16回 (『サンデー毎日』昭和10年
(1935)9月15日掲載) 紙本墨画 清水三年坂美術館収蔵

土師清二『旗本伝法』昭和12年(1937)1月23日~9月19日「東京日日新聞」連載

肉筆画・木版画

多忙かつ商業美術に矜持を持っていたため、特別に依頼されたものなどに限定され肉筆画は極めて数が少ないです。

版画作品は《お傳地獄》などの一部作品を除き、雪岱没後に制作されたものがほとんどで、肉筆画の傑作「青柳」などの木版画が、アダチ版画研究所や高見澤木版社から版行されました。

肉筆画


小村雪岱 「盃を持つ女」 絹本着色 1幅 清水三年坂美術館収蔵


小村雪岱 「月に美人」 絹本着色 1幅 清水三年坂美術館収蔵

《赤とんぼ》昭和12年(1937)頃  清水三年坂美術館収蔵

《写生 ヤマユリ》清水三年坂美術館収蔵

版画


「青柳」 木版多色刷 1枚 昭和16年(1941)頃 個人蔵


「雪の朝」 木版多色刷 1枚 昭和16年(1941)頃 個人蔵


「おせん 雨」 木版 1枚昭和16年(1941)頃 清水三年坂美術館収蔵 出典:三井記念美術館


おせん 薄 高見澤版画

「もみじ」 色摺木版画:下図は収録されている大阪毎日新聞社グラフ誌「Japan Today & Tomorrow」

舞台装置原画

大正13年に初めて舞台美術の仕事をして以来、六代目尾上菊五郎、五代目中村歌右衛門といった錚々たる役者たちにその才能を買われ、歌舞伎から新派まで、膨大な数の舞台美術を手がけました。


永井荷風 『すみだ川』(昭和3年(1928)上演 本郷座) 紙本着色 個人蔵 出典:三井記念美術館

中里介山『大菩薩峠』 昭和5年(1930)9月 上演 歌舞伎座
原画所蔵:清水三年坂美術館 出典:三井記念美術館

展覧会カタログ・チラシほか

小村雪岱スタイル-江戸の粋から東京モダンへ
三井記念美術館
会期:2021年2月6日(土)〜4月18日(日)


会場入口の展示

 


「江戸の残り香 ー 清水三年坂美術館コレクションより」佐野美術館 2012年

工芸

雪岱の美意識を培う土壌となったかもしれない、江戸~明治期の粋で洗練されたデザインの工芸作品を紹介します。


柴田是真 「蓮に鷺蒔絵残菜入」1合 江戸~明治時代・19世紀 個人蔵 出典:三井記念美術館


並河靖之 「藤に蝶図花瓶」1口 明治時代・19~20世紀 清水三年坂美術館 出典:三井記念美術館


高木芳真 「桜桃牙彫置物」1点 大正~昭和時代・20世紀 清水三年坂美術館 出典:三井記念美術館

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