酉(とり)年の鏡花は向かい干支の卯(うさぎ)にこだわり生涯コレクションしました

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鏡花が生涯に渡って「うさぎ」の品を愛して、大量にコレクションしていたのは有名です。

鏡花は酉(とり)年でした。自分の干支から数えて七番目のものを持つとその人のお守りになるのだそうで、鏡花のおかあさんが子どもの鏡花に掌中にのる水晶の兎をもたせてくださったのが、鏡花と兎の親身のはじまりです。」
と泉名月氏(鏡花の姪)はそのわけを説明しています。

鏡花の母に対する想いは強かったため、その教えを忠実に守り、向かい干支に当たる卯(うさぎ)の品物を集め続けたのでしょう。
また、向かい干支の人とは相性も良いといわれ、偶然でしょうが尾崎紅葉の干支が卯だったため、向かい干支・うさぎに対する思いはいっそう強くなったかと思われます。

向かい干支(えと)とは?

自分の干支を知っていて、毎年の干支をなんとなく意識している人は多いかもしりませんが、そもそも「向かい干支」などというものがあることをご存知でしょうか。
私は鏡花に関心を持って、そのウサギのコレクションを知るまで、そのようなものがあることは知りませんでした。

向かい干支とは十二の干支を時計のように並べたときに、自分の干支の向かい側にある干支のことをいいます。つまり、自分の干支から数えて七番目の干支になります。
「子(ねずみ)」を例にとると、自分の干支が「子(ねずみ)」なら、向かい干支は「午(うま)」になります。

それぞれの向かい干支はつぎのようになります。

  • 子(ねずみ)⇔午(うま)
  • 丑(うし)⇔未(ひつじ)
  • 寅(とら)⇔申(さる)
  • 卯(うさぎ)⇔酉(とり)
  • 辰(たつ)⇔戌(いぬ)
  • 巳(へび)⇔亥(いのしし)

向かい干支は干支とは正反対の性質を持つため、それを象徴する品物を身近に置くことで、自分の干支に由来する力以外に、向かい干支によって干支単独なら出せないパワーが得られるそうです。そのため、「守り干支」とも呼ばれ、江戸時代から信じられてきました。
また向かい干支にあたる人は、それぞれ自分に足りないものを互いに補いあえるため、相性が良いという説もあります。

鏡花にとって師の尾崎紅葉は向かい干支の人で、実際に多大な恩義を受けたため、母の「向かい干支」の教えをいっそう信じたことと思われます。

鏡花のうさぎコレクション

泉鏡花記念館の泉鏡花遺品展には次のような品々が出展されました。


水晶の兔の置物:鏡花九歳の年に母から贈られたといわれる品。


木製兔の紙切り


兔のブックエンド

また、ウサギを象った握りをつけたステッキも愛用していました。

すこし見にくいですが、当時の新聞の「御自慢拝見」というコラムにもコレクションのことが紹介されています(画面左下)。ただ文中の卯年というのは間違いで正しくは酉年です。

鏡花のうさぎコレクションにちなんで、鏡花ファンの聖地、金沢の泉鏡花記念館も次のようなうさぎのシンボルマークを使用しています。

迷信と片付けることは簡単ですが、なるほどと思って自分の向かい干支の人を探したり、品物を蒐集しても面白いのでは、、

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